【国税OBが語る】不動産小口化商品は改正前の2026年中に子供へ贈与すれば節税できる?施行前でも否認される〝総則6項〟のリスク
結論から申し上げますと、2026年中の贈与であれば、原則は「今のルール」で評価することになります。
ただし、「買ってすぐ子供に渡す」というやり方は、税務署が一番目を光らせている形でもあります。そのため、「改正前だから安心」とは言い切れない、というのが正直なところです。
なぜそうなるのか、順番に見ていきましょう。
①そもそも2027年から何が変わるの?
不動産には、ざっくり言うと2つの「価格」があります。
・時価:実際に売り買いされる価格
・路線価:税務署が決めた評価用の価格
これまで相続税や贈与税の計算では、「時価」ではなく「路線価」で評価してよい、というルールでした。
そして、賃貸物件や小口化商品は「時価」に比べて「路線価」がかなり低くなりやすく、この差が大きいほど節税効果も大きくなる仕組みでした。
そこで2027年1月からは、この差を縮めるための見直しが入ります。
※相続税の計算で使われる不動産の評価方法について基礎から知りたい方は、
「【初心者向け】相続の際の不動産評価額を簡単に計算する方法!」もあわせてご覧ください。

①賃貸マンションなどの「5年ルール」
見直しの内容としては、亡くなる前5年以内に購入・建築した賃貸物件は、「路線価」ではなく、購入価格をもとに地価の変動なども加味した金額の8割で評価しよう、というものです。
イメージとしては、次のとおりです。
・購入価格:1億円
・従来までの路線価での評価:3,000万円前後
・2027年以降の評価:約8,000万円
・結論:「買ってすぐ節税」はほぼ通用しなくなる
いわば、買ってから5年間は「時価」寄りで見られる期間が設けられる、というイメージです。
なお、賃貸物件の場合、5年を超えて持っていれば、従来どおり「路線価」などで評価できます。
②小口化商品は「5年」を待っても戻らない
一方で、小口化商品はもっと厳しい扱いとなります。
小口化商品とは、1棟の大きなビルを「ケーキを切り分けるように」小さく分けて、みんなで少しずつ買えるようにしたものです。
こちらは賃貸物件と違い、5年が過ぎても元の評価方法には戻らないとされています。
つまり、何年持っていても「時価」に近い金額で評価される、ということです。
②実は、質問者さんの計画とそっくりな事例があります
今回の見直しのきっかけの一つに、国税庁が紹介した事例があります。
小口化商品を贈与して「売値」と「評価額」の差で贈与税を大きく減らし、受け取った側はすぐにその商品を売ってお金に換えていた、というケースです。
①親:3,000万円(時価)で小口化商品を購入
②親→子:路線価評価により480万円で贈与
③子:小口化商品をすぐに売って、ほぼ3,000万円の現金を受け取る
最初と最後だけを見れば、「親の3,000万円の現金が、子供の手元に移っただけ」とも言えます。
それなのに、途中で一瞬だけ小口化商品に姿を変えたことで、贈与税は「3,000万円の時価」ではなく、路線価評価後の「480万円」に対して課税されるのです。
・3,000万円に掛かる贈与税:1,035万5,000円
・480万円に掛かる贈与税:45万5,000円
そのため、「実質は現金を渡したのと変わらないのに、税金だけが大きく減っているのはおかしいのでは?」というのが、税務署の見方です。
③施行日前でも「総則6項」のリスクがある
その上で、ご質問の「改正前の2026年中に子供へ贈与すれば、小口化商品を従来の基準で評価(節税)できるのか」についてです。
冒頭でもお伝えしたように、2026年中の贈与であれば、原則は「今のルール」で評価することになります。
ただし、ここで注意したいのが、今のルールの中にも「財産評価基本通達6項(いわゆる伝家の宝刀)」という規定があることです。
サッカーで言えば、ルールブックに細かく書いていなくても、明らかにおかしいプレーには審判がイエローカードを出せる、というようなイメージです。
つまり、「路線価」での評価が「時価」とあまりにかけ離れていて、その評価で課税するのは不適当だと判断されれば、改正前の贈与であっても「時価」で課税し直されることがあるのです。
実際に、令和4年には、相続直前に購入した賃貸マンションを「路線価」で評価した相続人に対し、この6項を使って「時価(鑑定評価額)」での課税を認めた最高裁判決も出ています。
※この最高裁判決と不動産を使った節税への影響については、
「【相続の新常識】不動産購入による相続税の節税対策は今後厳しくなります!【路線価否定判決】」で詳しく解説しています。

ですので、
・「2026年中の贈与だから、従来の評価で大丈夫」ではなく、
・「2026年中の贈与でも、取引の中身次第では否認される可能性がある」
と考えておくのが安全です。
特に否認されやすいのは、こんなケース
伝家の宝刀が抜かれやすいのは、先ほどの国税庁の事例のように、「節税のためだけの取引」に見えてしまうケースです。
具体的には、次のようなケースは特に注意が必要です。
①小口化商品を買ってから、贈与するまでの期間がとても短い
②贈与を受けた子供が、すぐに売って現金に換えている
③借入金で購入しているなど、節税以外の目的が説明しにくい
④贈与額(時価)が大きく、路線価との差額もかなり大きい
質問者さんの「改正前に購入して、すぐに子供へ贈与する」という計画は、①に当てはまってしまう可能性が高いと言えます。
さらに、贈与を受けたお子さんが2027年以降すぐに売却すれば、②にも当てはまり、先ほどの国税庁の事例とほぼ同じ流れになってしまいます。
もし否認されてしまったら
仮に否認された場合は、以下のような負担が発生します。
・本来の贈与税:「時価」3,000万円に対する贈与税(1,035万5,000円)との差額を追加で納付
・過少申告加算税:追加で納める税金に対するペナルティ
・延滞税:本来の納付期限から遅れた日数分の利息
「節税できたと思っていたら、後からペナルティも含めて数百万円単位で請求された」ということにもなりかねません。
まとめ
2026年中の贈与であれば、原則として今のルール(路線価)で評価することになります。
ただ、今回のように「買ってすぐ子供に贈与する」という形は、伝家の宝刀(総則6項)で否認される可能性があり、そうなると「時価」ベースの贈与税に加えて、ペナルティまで掛かってしまいます。
節税の「近道」に見える方法ほど、後から大きな遠回りになることもあります。
小口化商品を検討される際は、「路線価でどれだけ評価が下がるか」という節税面だけに目を向けるのではなく、購入から贈与までの期間や、贈与後にすぐ売却する予定がないかなど、「税務署から否認されるリスクがないか」という点まで含めて判断していただければと思います。


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