【国税OBが語る】名義預金の調査手法と税務署から名義預金と疑われない為の5つのポイント!
※名義預金を放置していると、将来相続が発生したときに高確率で税務調査の対象になってしまいます。
当該ページで名義預金が税務調査の対象になるポイントやリセット方法について解説していますので、ご確認のうえ名義預金についての不安がある方は、まずは一度ご相談下さい。
いま相続税の税務調査で、税務署が最も力を入れているのが、今回のテーマでもある『名義預金』に関する調査です。
この『名義預金』というのは、どういったものかと言いますと、
『預金口座の名義人』と『実際に預金』をしている人が異なる預金のことを、
他の人の名義を使った預金、つまり『名義預金』といいます。

今回の記事では、この名義預金について、
➀ そもそも名義預金ってどういうもの?
② 多くの家庭で陥りがちな名義預金に該当してしまう誤った行動2選
③ 税務署から名義預金として疑われないために気を付ける「5つのポイント」
④ 実際に税務調査官が行っている名義預金の調査手法
⑤ 既に行ってしまっている名義預金を今からリセットする方法
という5つのテーマに沿ってお話していきたいと思います。
➀ そもそも名義預金ってどういうもの?
では最初に、そもそも名義預金ってどういったものなの?という、基本的な部分について見て行きます。
コチラの一家のAさんは、将来の相続税の節税のために、毎年、妻と子供に生前贈与を行っていました。
その贈与の方法というのは、
・贈与者であるAさん本人が、妻と子供名義の預金口座を作成し、
・その口座に毎年お金を振込むという内容です。

ですが、妻と子供はその口座(自分名義)の存在自体を全く知りませんし、
もちろんAさんと2人の間で「お金をあげる・貰う」といった贈与契約も行われていません。
その様な状態のままAさんは、将来の相続税の節税になると思い、妻と子供名義の口座に、自身のお金を入金し続けたんです。

ですが皆さん、もうお気づきですよね。
この一家のように、
・口座の名義自体は妻と子供になっているが、
・実際に口座を管理・運用しているのはAさん、という形は、
他の人の名義を使った預金、つまり『名義預金』に該当するんです。
そしてこの『名義預金』というのは、Aさんの相続が発生した後において、
・この口座の本当の名義人は誰なのか?
・この口座のお金は本当は誰のお金なのか?という、厄介な問題に発展して行くんです。

では、ここまでの前提をもとに、次の章では、
『多くの家庭で陥りがちな名義預金に該当してしまう誤った行動2選』について、実際に2つの家庭をモデルに見て行きましょう。
②多くの家庭で陥りがちな名義預金に該当してしまう誤った行動2選
❶ 妻が夫名義の口座から妻名義の口座に徐々にお金を移動させる

名義預金に該当してしまう誤った行動の1つ目は、【妻が夫名義の口座から妻名義の口座に徐々にお金を移動させる】というものです。
例えば、
- 夫婦間でお互いの財産の線引きがあやふやになっていて、
- 夫の給与収入を預けている預金口座を、妻が管理・運用している
というご家庭は多いと思います。
この場合、
こういったケースは税務調査に入られた際、「夫の預金である!」と調査官から高確率で追及を受けることになります。
❷ 親が基礎控除の範囲内(110万円)で子供や孫名義の口座に預金をしている

2つ目のケースは【親が基礎控除の範囲内(110万円)で子供や孫名義の口座に預金をしている】というものです。
ここで紹介するのは、
親や祖父母が、贈与税の基礎控除(110万円)の範囲内で、子供や孫の預金口座に毎年こっそりと預金を行っている。
というケースを指します。
こういったケースで非常に多いのが、
という場合です。

『贈与契約』というのは、贈与者と受贈者がお互いに、
「贈与をします」「はい、贈与を受けます」という、双方の合意の元で行われるものです。
つまり、子や孫に対して相手の了承を得ずに行った贈与は、そもそも『無効』なのです。

ですのでこの様なケースにおいて税務署は、
「贈与された預金は子や孫のモノではなく、実際は親や祖父母の預金ではないのか?」と調査を行うことになり、お金を貰っていた子や孫達は、
・「いつお金を貰ったのか」
・「預金通帳や印鑑の管理状況はどうなっていたのか」などを、税務調査時において直接追及されることになります。
【十八歳以下の未成年者への贈与の場合】

ですが税務調査官としても少し判断が難しいのが、預金の名義人が未成年者の場合です。
未成年者の預金ですと、『ある程度の年齢までは子供の預金を親が管理しておく』というのは、当たり前の事ですよね。
例え一回だけの贈与でも、110万円なんて大金を未成年に持たせたら、逆に悪影響を与えるかもしれません。
ですので、そういう預金を「これは親が管理してるから親の預金」というのは、税務調査官としても難しい所です。
【既に嫁いでいて両親とは離れて暮らしている娘さんの場合】

ですが中には、既に嫁いで、両親とは離れて暮らしている娘さんの預金通帳や印鑑を、親御さんが管理されてるというケースもあります。
この場合、税務署から、
「はい、名義預金ですね!(実際は贈与をした方のお金ですよね)」と指摘されても、反証はなかなか難しいですね。
➁ 税務署から名義預金として疑われ無いために気を付ける【5つのポイント】
この様に、家族のことを思って良かれと思ってやった行為でも、
キチンとした手順を踏まずに贈与や預金を行ってしまうと、それが知らず知らずの内に名義預金に該当してしまいます。
ですのでここからは、あなたの行動が将来『名義預金』として税務署に追及されない為に、
名義預金として疑われ無いために気を付けるべき【5つのポイント】について、説明して行きたいと思います。
ポイント1:預金の管理運用は子や孫がしていたか

『通帳・カード・印鑑』
これらをキチンと子・孫が管理しているのか、改めて一度確認しておいて下さい。
ポイント2:届出印は贈与者と受贈者(贈与を受けた人)で違うモノを使っているか

子や孫の通帳を作った際の届出印は、キチンと子や孫の物を使っているでしょうか?
贈与者の印鑑で通帳を作っていないかを確認しておいて下さい。
贈与者が子や孫用の印鑑をそれぞれ新しく作成していたとしても、それが余りに複雑で似通っていると、定期預金などの継続手続きなどで印鑑を取り違えてしまう可能性があります。
税務署はこういったところも見逃しません。
ポイント3:口座作成時の届出住所は子や孫の住所になっているか

例えば、
『嫁いだ娘』や『家を出た次男』などが口座を作ったなら、届出住所は家を出た先の住所地でないと変ですよね。
ですがそれが、
という事があります。
ですので口座作成時の届出住所も、キチンと確認をしておいて下さい。
ポイント4:預金の利息は子・孫の口座に移っているか

「定期預金などの利息を誰が受け取っているのか?」という部分も、名義預金を疑われるポイントになります。
ポイント5:110万円を超える贈与を行った場合、子や孫が贈与税の申告をしているか

受贈者である子・孫が『自分で贈与税の申告を行っているか』という実態によって、
「お金をあげます・貰います」という贈与の認識がお互いにあったのかの判断材料になります。
贈与税の申告は、原則的にお金を貰った本人が行わなくてはいけませんから、
たまに、
- 111万円という『贈与税の基礎控除を1万円だけ超えた贈与』を行い、
- 贈与税の申告書と共に贈与税を1,000円だけ払って、
- 「完璧な贈与の証拠を作った」と思われている方もいますが、
先程お話した様に、
繰り返しになりますが、
贈与の契約は、「お金をあげた」「貰ったと」いうお互いの契約の元で成り立つものです。
「親や祖父母だけが一方的に贈与を行ったという形を作り、 税務署に贈与税の申告をすれば完璧」というものではございません。
また、お互いに贈与契約の意思があったとしても、
- 先ほど説明した1~4のポイントに不備があれば、
- 贈与税の申告をして税金を納めていても全く意味がありませんので、
その点も併せて注意が必要です。

③ 実際に税務調査官が行っている名義預金の調査手法

ではここからは、「税務署はどうやって名義預金の調査をしているのか?」
実際に私が税務調査官時代に行っていた手法を紹介していきたいと思います。
調査の対象になった方は下の図のような家族構成だったとして、お話をすすめます。

【 家族構成等 】
被相続人:
Aさん
相続人:
妻
長女(結婚して他県住み、子供1人)
長男(実家を出て1人暮らし)
まず税務調査官は、
- 『税務署に提出された相続税の申告書』と『既に把握している被相続人の資産状況』とを照らし合わせて、
- 「被相続人の預貯金が少ないな」と気づいた場合、
「その資金はどこに行ったのか?」
「亡くなったAさんから、奥さんや子供へ資金が流れたのではないか?」と疑います。

そしてその後、亡くなったAさんから相続人へのお金の流れを掴むため、
- 金融機関(銀行や証券会社など)に照会をかけ、この一家の取引明細を入手し、
- 家族の取引内容(金融機関名・年月日・預金者名・金額)を全てパソコンに入力します。
家族全員の取引明細の入力が完了すると、年月日でソートをかけます。
すると、家族の預金の取引内容が日付順に全て表示されるので、「資金の流れ」が一目瞭然で判断できるのです。

◯月◯日:Aさんから長男への資金が流れている
◯月△日:長男からAさんに資金が戻っている
▲月◯日:Aさんから長男に流れた資金が長女に流れている
△月△日:Aさんから長男と長女に流れた資金が同じ日に現金出金されている
というように、いろいろと見えてくるのです。
長男と長女が、同じ日に高額な預金を同時に出金しているなんて怪しいですよね。
こうなりますと、
「Aさんは何らかの理由でお金が必要だったために、自分で管理していた長男・長女名義の預金を使った」ということが見え見えです。

このように、名義預金が行われている家族間のお金の管理というのは、往々にしてどんぶり勘定となっていることが非常に多いのです。
他にも、
こういった行為もよく見られます。
Aさんの行動も含め、このような行動を税務署内部では『家族間で資金交流がある』と言っています。
税務調査官はこのように、
- パソコンを使って家族間の『資金交流』を確認し、
- 銀行に調査に入り、届出印鑑、届け出住所、定期預金などの継続の更新などは誰がしていたかなどを確認し、
- 名義預金の調査を進めていきます。

また、同時に証券会社に対してもアプローチを行います。
証券会社は銀行と違って顧客の『担当者』を決めていますので、証券会社の担当者に会い、
「誰が証券売買の手続きや連絡をしていたのか」という部分などを直接追及したりもします。
このような調査を実行し、「子供や孫の預金は、実際はAさんの名義預金だった」と判明した場合には、その名義預金はAさん自身の財産として相続財産に計上する必要があるんです。

繰り返しになりますが、あくまでも贈与というのは、
- 贈与する側「あなたにお金をあげます」
- 貰う側「はい、頂きます」という形式を取った、民法上の契約です。
ですので、贈与者が相手に黙って贈与を行い、銀行印も銀行カードも全部自分で管理をしていたら、
「それは〝贈与した物〟ではなくて、〝ただ贈与したつもりの物〟」と、税務署に判断されてしまいます。

そしてその上で、
「実際の預金は亡くなった人の名義預金だから、キチンと相続財産に含めて下さい」と、このように指摘をされるケースがありますので、十分にご注意頂きたいと思います。
➃ 既に行ってしまっている名義預金を今からリセットする方法
さて、ここまでの話を読んで来られて、
「もしかしたら、自分の家の預金は名義預金に該当しているかもしれない!」と、不安に思われた方もいらっしゃるかと思います。
ですのでここからは、
- 既に行ってしまった名義預金をどうすれば良いのか?
- 今からリセットをするのなら、どの様な方法で行うべきなのか?
という部分について解説をしていきたいと思います。
❶ あなたの預金が名義預金に該当するかをチェックしよう

まずは先程の、名義預金と疑われない為の5つのポイントをおさらいしましょう。
- 預金の管理運用は子・孫がしている
- 届出印は贈与者と受贈者(贈与を受けた人)で違うモノを使っている
- 口座作成時の届出住所は子や孫の住所になっている
- 定期預金の利息は子・孫の口座に移っている
- 110万円を超える贈与を行った場合、子や孫が贈与税の申告をしている
この5つの項目を全て正しく行っている方は、名義預金に関しては何も問題はありません。
しかし、5つの項目のうち幾つかの項目に該当してしまい、
「もしかしたら、うちの家族の預金は名義預金にされるかもしれない・・・」
こう思われた方は、
これから説明する【既に行ってしまっている名義預金を今からリセットする方法】を見て、是非対策をして頂ければと思います。
❷ 既に行われた名義預金の対処方法とリセット方法
名義預金の可能性がある場合の対処方法としましては、
皆さんの預金が先程の5つの項目の内、〝どの部分に問題があるのか〟によって具体的な対処方法が変わって来ます。
【➀預金の管理運用面〝だけ〟問題がある場合】
口座の名義人本人が預金通帳や印鑑、カードを管理する様にして下さい。

【➁~➄の項目のどれか1つでも当てはまる場合】
残念ながらこの場合は、名義預金となっている口座を活用し続けるのは難しいと言わざるをえません。

「どうしても、キチンと生前贈与をしたい・贈与を受けたい」という事であれば、
- 名義預金となっている口座から贈与者の口座に預金を戻し、
- 一度預金をリセットした上で、最初から改めて贈与を始められた方が良いでしょう。

何故リセットが必要かというと、そもそも現在既に名義預金と疑われる要素を持った預金口座ですから、
- 今後改めてキッチリと贈与契約書を作ったとしても、
- そして契約書通りにお金を振り込む形の贈与を繰り返したとしても、
- 将来の税務調査時に「令和〇年以降はキチンとした贈与をしています」と主張したところで、
元の預金がそもそも名義預金ですから、税務署への理解を求めるのは苦しいんです。

ですので酷な話になりますが、「どうしても、キチンと生前贈与をしたい・贈与を受けたい」という事であれば、
- 一度あなたや、あなたの家族の預金をリセットした上で、
- 改めて最初から贈与を始められた方が良いですね。
【リセットの具体的な手順】
では、『実際にどうやって名義預金をリセットすれば良いのか』ですが、
現在子供や孫名義になっている預金を、贈与者である祖父母、父母の口座に全て戻せば良いのです。

このように説明しますと、多くの方から、
「子供や孫名義の預金を、贈与者である親や祖父母の預金に戻すとなると、税務署はそれを子供や孫→祖父母や親への贈与として、贈与税を掛けるんじゃないんですか?」という質問が出て来ます。
ですがこれにつきましては心配ご無用です。
- 税務署は将来の相続税が減るような行為には厳しいのですが、
- 預金を祖父母や親に戻すという行為は将来の相続税が増える行為ですから、
- 子供や孫の預金を祖父母や親に戻したとしても、贈与税が課税されることはありません!
税務署には『贈与税は相続税の補完税』という基本理念があるため、
「途中の過程はどうであれ、最終的に相続税で税金を納めてくれれば良い」と思っているのです。

ですから、
「うちは、名義預金と疑われる5つのポイントに当て嵌まっている」と、認識されている方につきましては、
- 一度その預金を贈与者の口座に戻し、
- そこから再び5つのポイントに沿って贈与やお金の授受を行って頂ければ、
税務署は何も言って来ませんので、是非検討をしてみて下さい。

最後に、今から贈与をお考えの方、それと既にお金の贈与を受けられた方に対してのアドバイスがあります。
【今から贈与をお考えの方】
- お子さんやお孫さんの預金口座を新たに作らずに
- 今お子さんやお孫さん本人が管理している口座に、
- あなたの口座からお金を振り込むようにして下さい。

そうすることにより、今回の記事で説明しました5項目のうち、➀~➃までの間違いを回避することが出来ます。
【既にお金の贈与を受けられている方】
既にお金の贈与を受け取られていて且つ➀~➄のポイントをクリアしている方は、〝贈与を受けたお金の使い方〟に注意が必要です。
贈与を受けた方の中には、その口座の中の預金を手付かずのまま置いておく方が意外と多いです。
ですがこれは税務署目線からすれば、
「貰ったのに全然使われていないのは不自然だ」、
「この預金は名義預金なんじゃないか?一度調査してみようか」、ということになりますので、

(※➀~➄のポイントを全てクリアしているので、最終的に「問題なし」と判断されます)
貰ったお金の無駄遣いはダメですが、手つかずのまま貰ったお金を置いておくよりも、
- お金を貰った人の家庭の公共料金の引き落し口座にする
- 孫の口座であれば、その口座からお金を引き出して学用品の購入に充てる
この様に、ちょくちょく引き出されている方がよりベターだということを、シッカリと覚えておいて下さい。


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